「結婚はロマンスじゃない。ただの制度だと思ってる。」
今の彼氏と出会ったばかりの頃、わたしは彼に自分の結婚観をそう話した。
わたしは29歳のときに離婚している。
あれから10年が経った。
「結婚すれば幸せになれると思ってる27歳の女」と「再婚して家族を安心させたい43歳の男」が出会って、お互いに「ちょうどよかったから」結婚に至った。
離婚は当然の結果だと思う。
だからというわけではなく、年齢を重ねるにつれて結婚に対する考え方が変わっていった。
その時にはもう、異性にときめく自分が想像できなくなっていた。
「誰かにとっての女」じゃなくて「ただの人」として存在していたいと思っていた。
なのに。
やっぱりわたしも女だった。
付き合う前に「結婚願望はない」と言っておきながら、付き合ってから「やっぱり結婚したい」だなんて、あとだしじゃんけんみたいでずるいよな、と思った。
わたしの年齢でそれを言ったら重いよな、と思った。
そもそも相手の家族に合わせる顔がない。
15歳も年上だなんて、どんな女だろうかと好奇の目で見られるに違いない。
どこの馬の骨かも知れないバツイチの中年女を嫁にもらうために息子を育ててきたんじゃないと思われるに違いない。
そんなわるい想像しか浮かばなかった。
やっぱりいつか別れなきゃいけないよな。
そう思って、またすこし落ち込む。
なんで結婚したいのか考えてみたら、それはたぶん、社会のルールの中で認められた「夫婦」になって、彼と生きて行きたいんだと思う。
「一緒にいられればどんな形でもいい」だなんて、やっぱりすこし悲しい。
ほんとに人間はどこまでも社会的な動物だ。
重いと思われるだろうなと思いつつも思っていることを言わずにはいられないのがわたしの性格で、自分の気持ちは全部彼に伝えた。
あなたと家庭をつくりたい気持ちが芽生えていること。でも年齢差で葛藤していること。包み隠さずすべて話した。
話し合いはおだやかではなかった。
お互いの言葉の誤解がまた誤解を生んでこじれ、別れる寸前になった。
でも最終的には2人とも「わたしたちは大丈夫だと思いたい」という想いで一致していることを確かめあった。
どんな口約束をしても、未来はどうなるかわからない。
それでも「わたしたちは大丈夫だと思いたい」というその気持ちが2人にあれば、わたしたちは大丈夫。
そう信じたい。
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